【基礎知識】熱可塑性エラストマーとは?ゴムや樹脂との違いを解説

熱可塑性エラストマー基礎解説 ゴム基礎知識

環境問題や効率化への意識が高まる中、産業界で注目を集める素材が
「熱可塑性エラストマー(TPE)」です。この素材は、ゴムのような弾性と樹脂のような加工性を兼ね備え、多様な分野で利用されています。
この記事では、熱可塑性エラストマーの基本的な特徴やゴム・樹脂との違い、代表的な種類や用途について解説します。TPEがどのように私たちの生活を支え、そして未来をより持続可能なものに変えていくのか、その可能性を一緒に探っていきましょう。

熱可塑性エラストマー(TPE)の概要

熱可塑性エラストマー(TPE)は、ゴムのような弾性と樹脂の加工性を兼ね備えた高分子材料です。TPEは、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる特性を持ち、射出成形や押出成形などの一般的なプラスチック加工技術を用いて容易に成形できます。この特性により、製造サイクルが短縮され、効率的な製造が可能です。

TPEの主な特徴には以下のものがあります:

  1. 加工性: TPEは熱可塑性であるため、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まります。この特性により、射出成形や押出成形などの一般的なプラスチック加工技術を用いて容易に成形することができます。
  2. 弾性と柔軟性: TPEはゴムのような弾性を持ち、引張りや圧縮に対して優れた復元力を示します。これにより、柔軟でありながらも耐久性のある製品を作ることができます。
  3. リサイクル性: TPEはリサイクル可能な素材であり、環境への負荷を軽減する点でも注目されています。使用後は再度加熱して成形することができるため、廃棄物を減少させることができます。
  4. 多様な種類: TPEにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
    例えば、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)などがあります。
  5. 用途の広さ: TPEはその特性から、多岐にわたる分野で利用されています。日用品、自動車部品、医療機器、電子機器など、多様な製品に採用されており、その需要は年々増加しています。

TPEはその優れた加工性と弾性から、多くの産業で重要な役割を果たしています。また、環境への配慮からもリサイクル可能な素材として注目されており、今後もその利用範囲は広がっていくと考えられます。


熱可塑性エラストマーのゴムや樹脂との違い

熱可塑性エラストマーは、以下の点でゴムや樹脂と異なります。

特性熱可塑性エラストマー (TPE)ゴム樹脂
加工性熱可塑性樹脂と同様に射出成型が可能加硫工程が必要熱を加えて成型可能
弾性高い非常に高い比較的低い
リサイクル性高い低い高い
用途自動車部品、家電、医療用品などタイヤ、シール材、ホース食品容器、電子部品など

熱可塑性エラストマーは、加工時の柔軟性とリサイクル性の高さが特徴で、ゴムや樹脂よりも環境に優しい選択肢として注目されています。


熱可塑性エラストマーの種類

熱可塑性エラストマー(TPE)は、柔軟性と弾性を兼ね備えた高分子材料で、さまざまな用途に利用されています。ここでは、代表的な種類であるスチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)について詳しく解説します。

(出典)https://www.plaquick.com/noteworthy-materials/2126

スチレン系エラストマー(TPS)

TPSは、靴底や接着剤などに広く使用されており、その柔軟性が特徴です。
TPSは、ポリスチレンとブタジエンまたはイソプレンのブロック共重合体で構成されており、優れた弾性と加工性を持っています。この特性により、靴底のような耐久性が求められる製品や、接着剤としての用途に適しています。

オレフィン系エラストマー(TPO)

TPOは、自動車バンパーや建材に利用されることが多く、高い耐熱性が特徴です。
TPOは、ポリプロピレンとエチレンの共重合体であり、軽量でありながら強度が高く、耐候性にも優れています。このため、自動車部品や建材などの外部環境にさらされる製品に最適です。

ポリエステル系エラストマー(TPEE)

TPEEは、耐摩耗性や耐薬品性に優れており、自動車部品や工業製品で活用されています。
TPEEは、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルから構成されており、高温環境下でも安定した性能を発揮します。この特性から、自動車の内装部品や工業用ホースなど、高い耐久性が求められる用途に適しています。

ポリウレタン系エラストマー(TPU)

TPUは、高い耐摩耗性と柔軟性から靴やフィルム、電線被覆に使用されます。TPUは、ポリウレタンを基にした材料であり、その特性から非常に多様な用途があります。特に靴底やスポーツ用品では、その弾力性と耐久性が求められるため、TPUが選ばれます。

ポリアミド系エラストマー(TPAE)

TPAEは軽量でありながら強靭な特性を持ち、スポーツ用品や医療器具に採用されています。TPAEはナイロン樹脂を基にしており、その特性から高い耐摩耗性と耐薬品性を発揮します。このため、医療機器やスポーツ用品など、高い性能が求められる分野での使用が増えています。

これらの熱可塑性エラストマーは、それぞれ異なる特性を持ち、それに応じた用途で選ばれています。柔軟性や耐熱性、耐摩耗性などの特長を活かし、多様な産業で重要な役割を果たしています。


熱可塑性エラストマーの特性

熱可塑性エラストマー(TPE)は、その優れた特性から多くの産業で選ばれています。以下に、TPEの特性について詳しく解説します。

加工のしやすさ

TPEは射出成形や押出成形といった一般的なプラスチック加工技術を用いて成形できるため、製造プロセスが効率的です。これにより、複雑な形状やデザインを持つ部品を短時間で生産することが可能です。また、加硫工程が不要であるため、生産サイクルが短縮され、時間と資源の節約につながります。

リサイクル性

リサイクル性

TPEは熱可塑性であるため、加熱することで再利用が可能です。これにより、環境への負荷を軽減し、持続可能な製品開発に寄与します。従来の熱硬化性ゴムと異なり、TPEは廃棄物の削減にも貢献します。リサイクルプロセスは比較的簡単で、再成形後も機械的特性を維持しやすいことが特徴です。

柔軟性と耐久性

TPEはゴムのような弾性を持ちながらも、軽量であるため、多様な用途に適しています。例えば、自動車部品や電気機器のカバーなど、柔軟性が求められる製品に広く使用されています。また、耐摩耗性や耐油性に優れた種類もあり、過酷な環境下でも性能を維持します。

軽量性

TPEは比重が小さいため、製品全体の軽量化が可能となり、特に携帯機器や自動車部品などでは重要な要素となります。この軽量化は、省エネルギーやコスト削減にも寄与します。自動車産業では、軽量化は燃費向上やCO2排出削減に直結するため、非常に重要な要素です。

これらの特性から、熱可塑性エラストマーは日用品から精密機器、自動車部品まで幅広い分野で利用されており、その需要は今後も増加すると考えられています。


熱可塑性エラストマーの用途

熱可塑性エラストマー(TPE)は、その優れた特性から多岐にわたる分野で広く使用されています。以下に、主な用途とそれぞれの特性について詳しく解説します。

自動車産業

TPEは自動車産業で広く利用されており、特にバンパー、シール材、配線保護などに使用されています。TPEは軽量でありながら高い耐久性を持ち、衝撃吸収性にも優れています。これにより、自動車部品の製造において、コスト効率を高めつつ、性能を向上させることが可能です。また、TPEは成形が容易であり、複雑な形状の部品も製造できるため、自動車のデザイン自由度を高める要因となっています。

医療用品

医療用品においては、TPEはチューブやグリップ部分などに使用されます。生体適合性が高く、安全性が求められる医療機器において、TPEは非常に重要な素材です。例えば、手袋やカテーテルなどの医療製品では、TPEの柔軟性と耐久性が患者の快適さと安全性を確保します。また、TPEは洗浄や滅菌が容易であるため、医療現場での使用にも適しています。

家電製品

家電製品では、コードカバーやシール材としてTPEが利用されています。これらの製品には耐熱性や耐摩耗性が求められますが、TPEはこれらの特性を兼ね備えています。特に、コードカバーは柔軟性が必要でありながらも耐久性が求められるため、TPEは理想的な選択肢です。また、TPEは色彩やデザインの自由度も高く、多様な製品デザインに対応できます67

スポーツ用品

スポーツ用品では、シューズや保護具などにTPEが使用されています。スポーツシューズの靴底には、高い弾力性と耐摩耗性が求められますが、TPEはこれを実現するための優れた素材です。また、保護具では衝撃吸収性能が重要であり、TPEはその特性から多くのスポーツ用品メーカーに採用されています。

これらの用途においてTPEが選ばれる理由は、その特性によるものです。具体的には、高い弾力性、耐久性、加工のしやすさ、生体適合性などがあります。これらの特性を活かすことで、多様な製品に応じた最適なソリューションを提供することが可能となります。

総じて、熱可塑性エラストマー(TPE)は、自動車産業から医療用品、家電製品、スポーツ用品まで幅広い分野でその特性を活かし、多岐にわたる製品に採用されています。その柔軟な設計と優れた性能によって、今後もさらなる応用が期待されます。ます。


まとめ

熱可塑性エラストマーは、ゴムと樹脂の利点を兼ね備えた材料であり、加工性、リサイクル性、耐久性に優れています。その多様な特性から、自動車部品や医療用品、家電製品など、幅広い分野で使用されています。環境意識が高まる中、TPEは持続可能な社会に向けた重要な材料の一つとして注目されています。

ワタナベ

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