2024年のゴム業界における主要なニュースを以下にまとめました。
これらのニュースは、業界全体のトレンドや企業の戦略を反映しており、特に自動車生産の回復や持続可能な製品開発、天然ゴム供給の不安などが注目されています。
具体的には、自動車生産が半導体不足の改善により回復した一方で、新ゴムの消費量は依然として2019年以前の水準には達していないことが挙げられます。
また、ブリヂストンや住友理工などの企業が環境への配慮を強化し、新技術を導入することで持続可能な製品開発に取り組んでいる点も重要です。これらのトピックスは、2024年のゴム業界における主要なニュースとして、今後の市場動向を占う上で欠かせない情報となるでしょう。
- ①自動車生産の回復とゴム消費量の伸び悩み
- ②営業利益が好調、上位企業が牽引
- ③ブリヂストンの持続可能な製品開発
- ④住友理工の新技術でCO2削減
- ⑤エルニーニョ現象による天然ゴム供給の不安
- ⑥横浜ゴム、ホンダ車に新タイヤ供給
- ⑦合成ゴム需要の伸び悩み
- ⑧三ツ星ベルト、コンベヤベルトの新展開
- ⑨川口化学工業、ゴム薬品事業で増収
- ⑩ブリヂストン、グッドデザイン賞受賞
- ⑪NOKの初のBtoC商品がグッドデザイン賞受賞
- ⑫バンドー化学、食品・物流向け製品強化
- ⑬リトレッドタイヤの需要拡大
- ⑭天然ゴムの価格軟化
- ⑮プラス・テク、ITインフラ市場向け製品強化
- ⑯住友ゴム、EVタイヤでシェア拡大
- ⑰ゴム製品の原材料価格上昇
- ⑱十川ゴム、半導体市場向け製品拡大
- ⑲弘進ゴム、工作機械市場での拡大
- ⑳NOK、シール製品の新工場建設
①自動車生産の回復とゴム消費量の伸び悩み
2024年のゴム業界において、自動車生産は半導体不足の改善により回復していますが、新ゴムの消費量は2019年以前の水準に達していません。この現象にはいくつかの要因があります。
まず、自動車生産の回復は、半導体供給の安定化によるもので、これにより自動車メーカーは生産能力を増強し、需要に応じた生産を再開しています。日本自動車タイヤ協会(JATMA)の予測によれば、2024年の国内自動車生産台数は910万8,000台で前年比1.8%増と見込まれています。
しかし、新ゴム消費量が2019年以前の水準に達していない理由として、コロナ禍からの回復過程での需要構造の変化が挙げられます。2024年の新ゴム消費量は124万2,400トンと予想されており、前年比1.2%増にとどまる見込みです。これは、前年を上回るものの、コロナ禍前の2019年と比較すると6.5%も低い水準です。
さらに、合成ゴムや天然ゴムの需要が期待されるほど伸びていないことも影響しています。自動車業界全体が回復しているにもかかわらず、新ゴム消費量が伸び悩む背景には、環境意識の高まりやリサイクルタイヤ(リトレッドタイヤ)の需要拡大など、消費者や企業の選好が変化していることがあります。これにより、新規ゴム製品への需要が抑制されている可能性があります。
このように、自動車生産は回復しているものの、新ゴム消費量は依然として低迷しており、業界全体としては新たな戦略や市場への適応が求められています。
②営業利益が好調、上位企業が牽引
2024年のゴム業界は、特に上位企業の活躍により営業利益が好調です。以下にその詳細をまとめます。
まず、横浜ゴムは2024年度第2四半期において、売上収益が5,253億円(前年同期比18.5%増)、営業利益が563億円(同99.6%増)を記録しました。
これは過去最高の業績であり、主力のタイヤ事業の好調さが要因です。また、原材料価格や物流コストの改善、為替の円安も寄与しています。
一方、三ツ星ベルトは売上高が840億1400万円(前期比1.3%増)であったものの、営業利益は77億5900万円(同14.1%減)となりました。
労務費や物流コストの影響がプラスに働いた一方で、売上高の減少が営業利益を圧迫しました。
NOKは、2025年3月期第1四半期に売上高が1,881億7,000万円(前年同期比14.8%増)、営業利益が56億5,200万円と前年同期の損失から回復しました。
シール事業が増収増益を達成し、電子部品事業も好調でした。
ブリヂストンは持続可能な製品開発に注力し、環境への配慮と収益性を両立させた新技術を導入しています。これにより、グッドデザイン賞を受賞した製品もあり、市場での競争力を高めています8。
住友ゴム工業は、特に電気自動車(EV)向けタイヤの開発に注力し、耐久性と効率性を兼ね備えた製品を発表しています。これにより、EV市場でのシェア拡大を目指しています。
これらの企業はそれぞれ異なる戦略を持ちながらも、共通して持続可能性や技術革新に焦点を当てており、それが2024年のゴム業界全体のパフォーマンス向上につながっています。自動車生産の回復や新技術の導入、持続可能な製品開発が業界の成長を支えています。
③ブリヂストンの持続可能な製品開発
ブリヂストンは、持続可能な製品開発において重要な取り組みを進めています。
特に、2050年を見据えた環境長期目標として「100%サステナブルマテリアル化」を掲げ、2030年までにその比率を40%に引き上げることを中間目標としています。
持続可能な製品開発の主な要素
- サステナブルマテリアルの使用 ブリヂストンは、再生可能資源や再生資源を使用し、ライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料を使用することを目指しています。
- 循環型経済への貢献 資源のリデュース、リユース、リサイクルを推進し、使用済みタイヤのリトレッド技術や再生ゴムの活用を進めています。
- 技術革新とビジネスモデルの革新 新しい製造技術や材料開発を通じて、環境負荷を低減しつつ製品性能を向上させることに取り組んでいます。
- 天然ゴムの持続可能性 天然ゴムの安定調達と生産性向上を図るため、自社農園での栽培ノウハウを活かし、生産農家への支援や供給源の多様化を進めています。
- 社会的責任と倫理的調達 児童労働や強制労働といった人権問題にも関与し、倫理的な調達プロセスを確立しています。
これらの取り組みは、ブリヂストンが持続可能な社会の実現に向けてどのように貢献しているかを示すものであり、企業としての成長と社会価値の創出を両立させるための基盤となっています。
④住友理工の新技術でCO2削減
住友理工は2024年において、CO2削減に向けた新技術を導入し、特に生産工程でのエネルギー効率向上に成功しました。主な取り組みとして、遮熱塗料を金型に塗装することで、金型の消費電力を抑え、年間約1,000トンのCO2排出量削減を達成しました。この技術は、金型の加熱を抑え、消費電力を約15%削減する効果があります。
さらに、住友理工は国内サプライヤーとも協力し、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減にも取り組んでいます。2024年度からは、一部の国内サプライヤーの金型にも同様の遮熱塗料を塗装する計画があり、これによってさらなる排出量削減が期待されています。
住友理工はまた、再生可能エネルギーの利用拡大にも注力しており、2023年度には再生可能エネルギー使用量が前年度比21%増加しました。これにより、環境への影響を低減しつつ、持続可能な製造プロセスを確立しています。
これらの取り組みは、住友理工が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという「カーボンニュートラル」の目標に向けた重要なステップとなっています。住友理工の技術革新は、ゴム業界全体にも影響を与える可能性があり、他の企業も同様の技術を採用することで、業界全体のCO2排出量削減につながることが期待されています。
⑤エルニーニョ現象による天然ゴム供給の不安
2024年のエルニーニョ現象は、天然ゴムの供給に大きな影響を与えています。
エルニーニョは、太平洋赤道域の海面温度が異常に高くなることで、世界中の気象パターンに影響を及ぼします。この現象は、特に東南アジアの天然ゴム生産国において、異常気象を引き起こし、生産量の減少を招いています。
天然ゴム生産への影響
エルニーニョによる異常気象は、タイやインドネシアなどの主要な天然ゴム生産国での生産量を減少させています。具体的には、高温や降雨不足がゴムの木にストレスを与え、ラテックスの収量を低下させています。タイでは生産量が最大10%減少する可能性があり、ベトナムでも3.5%の減少が予測されています。
経済的影響
生産量の減少に伴い、天然ゴムの価格は上昇しています。
2024年初頭には、シンガポール商品取引所での価格が1キログラムあたり2.02ドルに達し、過去3年間で最高値を記録しました。
この価格上昇は、供給の減少だけでなく、地政学的緊張や物流の課題によるものでもあります。
産業への影響
天然ゴムは、自動車産業や医療機器製造において重要な素材であり、供給の減少はこれらの産業に影響を及ぼします。特にタイヤ製造においては、供給不足がコストの増加や製品の不足を引き起こす可能性があります。
このように、2024年のエルニーニョ現象は、天然ゴムの供給に対する不安を引き起こし、価格の変動や産業への影響をもたらしています。今後も気象条件や経済環境の変化に注視する必要があります。
⑥横浜ゴム、ホンダ車に新タイヤ供給
横浜ゴムは2024年にホンダ車向けに新しいタイヤを供給することを発表しました。特に注目されるのは、サステナブル素材を活用した「ADVAN」ブランドのタイヤです。これには、ウェット用の「ADVAN A006」とドライ用の「ADVAN A005」が含まれます。「ADVAN A006」は再生可能原料比率が向上しており、環境への配慮がなされつつも高い性能を維持することが期待されています。「ADVAN A005」は全日本スーパーフォーミュラ選手権でのコントロールタイヤとして使用され、サステナブル素材の使用比率を高める方針です。
また、ホンダの軽自動車「N-BOX JOY」には「BluEarth AE-01」というタイヤが新車装着用として納入されます。このタイヤは、低燃費性能を発揮しつつ、静粛性や快適性、乗り心地、ロングライフといった基本性能も高いレベルでバランスさせています。
横浜ゴムは、モータースポーツ活動を通じて技術開発を進めており、特にレーシングタイヤの開発においては、天然ゴムや植物由来のオイル、リサイクル材料を使用することで、環境負荷を軽減しつつ性能を向上させています。これにより、モータースポーツ界でもカーボンニュートラルへの取り組みが進められています。
これらの新しいタイヤ供給は、ホンダ車のパフォーマンス向上に寄与することが期待されており、特にスーパーフォーミュラやその他のモータースポーツイベントでの使用が予定されています。サステナブルな取り組みはブランドイメージにも良い影響を与えると考えられます。
⑦合成ゴム需要の伸び悩み
合成ゴムの需要が伸び悩んでいる背景には、自動車業界の回復の遅れが大きく影響しています。
2024年においても、合成ゴムの需要は期待されるほどの成長を見せていません。
まず、自動車業界は半導体不足や供給チェーンの問題から完全には回復しておらず、これが新車生産やタイヤ販売に影響を及ぼしています。特に、合成ゴムの主要用途である自動車タイヤの需要が低迷しているため、合成ゴム市場全体にも悪影響を与えています。
さらに、中国経済の低迷やロシア・ウクライナ紛争の影響も、合成ゴム需要に不透明感をもたらしています。中国では自製化が進行しており、これが合成ゴム市場における競争を激化させています。
特にスチレンブタジエンゴム(SBR)やブタジエンゴム(BR)は、自動車タイヤの需給に大きく依存しているため、自動車生産の回復が遅れると需要も減少します。
また、原材料費や輸送費の上昇も企業の採算性を圧迫し、合成ゴム製品の価格競争力を低下させています。このような状況下では、企業は新たな投資を控える傾向が強まり、結果として合成ゴムの需要回復がさらに遅れる可能性があります。
総じて、自動車業界の回復遅延とそれに伴うタイヤ需要の低迷が、合成ゴム市場全体に影響を与えており、2024年もその状況は続くと予想されています。
⑧三ツ星ベルト、コンベヤベルトの新展開
三ツ星ベルトは、2024年に向けてコンベヤベルト製品の販売を拡大するために、専用ウェブサイトを開設しました。この新たな取り組みは、同社の製品ラインナップを強化し、顧客へのアクセスを向上させることを目的としています。
まず、専用ウェブサイトの開設は、顧客が三ツ星ベルトの製品情報に簡単にアクセスできるようにするための重要なステップです。これにより、顧客は製品の仕様や用途、価格などの詳細情報を迅速に確認できるようになります。また、オンラインでの販売促進は、特にデジタル化が進む現代において、顧客との接点を増やし、販売機会を拡大する効果があります。
さらに、三ツ星ベルトは環境への配慮も重視しており、持続可能な製品開発にも取り組んでいます。新しいウェブサイトでは、環境配慮型製品やその特長についても情報提供が行われる可能性があり、これによりエコ意識の高い顧客層へのアプローチも強化されるでしょう。
このように、三ツ星ベルトの専用ウェブサイト開設とコンベヤベルト製品の販売拡大は、顧客サービスの向上、市場競争力の強化、そして持続可能なビジネスモデルの確立に寄与する重要な施策です。これらの取り組みは、同社が今後も成長し続けるための基盤となるでしょう。
⑨川口化学工業、ゴム薬品事業で増収
川口化学工業は、2024年度第3四半期においてゴム薬品事業で前年同期比10.7%の増収を達成しました。この増収は、主に国内外の市場における需要回復によるものです。
まず、国内市場では自動車生産の回復が大きな要因となりました。自動車部品関連向け製品の需要が増加し、医療用途向け製品の需要も回復したことが売上の押し上げに寄与しました。
また、海外市場でも汎用製品や自動車部品関連製品の需要が増加し、特殊加硫剤の新たな用途への拡販が進みました。これにより、海外向けの売上も前年を上回る結果となりました。
一方で、タイヤ向け製品は顧客の生産調整の影響を受けて販売が低迷しましたが、他の製品群が好調だったため、全体としては増収を達成しました。
このように、川口化学工業のゴム薬品事業は、自動車産業や医療分野など多様な市場からの需要回復を背景に、2024年度第3四半期において10.7%の増収を実現しました。
⑩ブリヂストン、グッドデザイン賞受賞
ブリヂストンは、「REGNO GR-XⅢ」など3製品で2024年グッドデザイン賞を受賞。革新的なデザインと技術力が評価されています。
⑪NOKの初のBtoC商品がグッドデザイン賞受賞
NOKのヘアゴム「KKOOR」が同社初のBtoC商品としてグッドデザイン賞を受賞し、新たな市場への展開を進めています。
⑫バンドー化学、食品・物流向け製品強化
バンドー化学は、食品および物流分野向けのゴム製品の開発に注力し、業界内でのシェアを拡大しています。特に食品産業向けには、搬送ベルトの開発に力を入れており、製菓、製パン、米飯、食肉、構内物流などの工程で使用されるベルトを提供しています。これらのベルトは、食品の付着を低減する技術が強化されており、生産効率の向上と衛生管理の強化に寄与しています。
具体的な製品としては、「ミスターNスティック®」があり、しゃもじの表面にある凸形状を再現して高い離形性を発揮します。これにより、炊きたてのご飯や米菓の材料を搬送する際の非付着性が向上し、食品の品質保持に貢献しています。また、このベルトは耐湿熱性や耐薬品性にも優れており、厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。
物流分野では、樹脂コンベヤベルトの販売を通じて、物流業界の多様なニーズに応えています。
特に「ミスターシリーズ」と呼ばれる新しい製品ラインを展開し、
「Keep Clean Project」をテーマにした製品が注目されています。
これにより、食品業界や物流業界での使用が促進され、展示会などで積極的にPR活動も行っています。
バンドー化学は、環境対応型製品の開発にも力を入れており、新製品の50%以上を環境対応製品とする目標を掲げています。これには、省エネルギーや廃棄物削減に寄与する技術が含まれています。
このような戦略的なアプローチによって、バンドー化学は食品および物流分野での競争力を高めており、市場シェアの拡大を実現しています。
⑬リトレッドタイヤの需要拡大
リトレッドタイヤ(再生タイヤ)の需要は、環境意識の高まりにより2024年も拡大すると予測されています。この成長の背景には、いくつかの重要な要因があります。
まず、リトレッドタイヤは新しいタイヤに比べてコストが大幅に低いため、
特に商用車の運行者にとって経済的な選択肢となります。リトレッドプロセスでは、摩耗したタイヤのトレッドを新しいゴムで再加工することで、元の性能を維持しつつ、30%から50%のコスト削減が可能です。これにより、企業は運用コストを抑えつつ、持続可能な運営を実現できます。
次に、環境への配慮が高まる中で、リトレッドタイヤは廃棄物削減と資源の効率的な利用に寄与します。リトレッドによって、新しいタイヤの製造に必要な材料を最大70%節約できるとされており、
これが環境負荷の軽減につながります。また、リトレッドタイヤは製造過程での二酸化炭素排出量を削減するため、持続可能な循環経済の一環として注目されています。
さらに、技術革新もリトレッドタイヤ市場の成長を後押ししています。新しい材料や製造技術の導入により、リトレッドタイヤの性能や耐久性が向上し、新品タイヤと同等の品質を提供できるようになっています。これにより、消費者や企業がリトレッドタイヤを選択する際の信頼性が高まり、市場全体の需要が増加しています。
最後に、アジア太平洋地域では特にこの傾向が顕著であり、2023年には約12.9億米ドルの市場規模があり、2032年までには約20億米ドルに達すると予測されています。この成長は主に商業輸送業界でのリトレッドタイヤへの需要増加によるものです。
これらの要因から、リトレッドタイヤ市場は2024年も引き続き成長すると考えられています。環境意識の高まりと経済的な利点が相まって、多くの企業や消費者がリトレッドタイヤを選択することが期待されます
⑭天然ゴムの価格軟化
中国の景気対策が不透明なため、天然ゴムの価格は2024年に入ってからも軟化しています。
2024年に入ってからの天然ゴムの価格軟化は、中国の景気対策の不透明感が大きな要因となっています。中国政府の景気刺激策が具体的な効果を示さない限り、価格の軟化は続く可能性があります。
特に、中国経済の減速懸念が根強く、これが天然ゴムの需要に対する不安を引き起こしています。
価格動向と市場環境
2024年の天然ゴムの平均価格は、2023年の平均価格223円から下落し、200円(レンジ180~270円)を想定しています。
この価格下落は、上海ゴム相場の急騰が一服し、調整売りが優勢になったことが背景にあります。
需給バランスと供給リスク
天然ゴムの需要は、中国市場を中心に鈍化しています。
中国では新車販売台数が前年比3%増に留まる見込みであり、これがタイヤ需要に直接的な影響を与えています1。また、エルニーニョ現象による天候不順や供給不安も影響を与えていますが、
全体的には中国経済要因が主導的な役割を果たしています。
為替相場とコスト
為替相場も重要な要因です。2024年には米国の利下げや日本のマイナス金利解除が予想されており、円高・ドル安傾向になることで価格下振れリスクが高まる可能性があります。
このように、天然ゴムの価格軟化は中国経済の動向と密接に関連しており、今後の市場動向は中国政府の政策や経済状況によって大きく左右されるでしょう。
⑮プラス・テク、ITインフラ市場向け製品強化
プラス・テクは、データセンター向けの製品供給を強化し、IT分野でのシェア拡大を目指しています。
⑯住友ゴム、EVタイヤでシェア拡大
住友ゴム工業は、電気自動車(EV)向けのタイヤ開発において、耐久性と効率性を両立させた製品を発表しています。これは、EV市場の急成長に対応するための重要な戦略です。
まず、耐久性についてですが、EVは従来の内燃機関車両と比べて重量が重く、トルクが高いため、タイヤにはより高い耐久性が求められます。住友ゴムは、このニーズに応えるために、強化された素材や構造を採用し、タイヤの寿命を延ばす技術を開発しています。
次に効率性ですが、EVの性能を最大限に引き出すためには、転がり抵抗を低減することが不可欠です。転がり抵抗が低いタイヤは、走行時のエネルギー消費を抑え、航続距離を延ばすことができます。住友ゴムは、最新の技術を駆使してこの転がり抵抗を最小限に抑えたタイヤを設計しています。
さらに、住友ゴムは「タイヤ空力シミュレーション」という新しい技術も導入しています。
この技術は、タイヤ周辺の空気抵抗を可視化し、最適なタイヤ形状を開発するために活用されます。
これにより、EVの電費性能向上にも寄与することが期待されています。
住友ゴムのこれらの取り組みは、EV市場での競争力を高めるだけでなく、持続可能な社会への貢献にもつながります。特にカーボンニュートラルや環境負荷低減への意識が高まる中で、効率的なタイヤ開発は重要な役割を果たします。
このように、住友ゴムはEV向けタイヤの開発を通じて、市場シェアの拡大を目指しており、その成果として耐久性と効率性を両立させた製品群を提供しています。これにより、消費者からの信頼も得られ、市場での地位向上につながるでしょう。
⑰ゴム製品の原材料価格上昇
2024年におけるゴム製品の原材料価格上昇は、業界全体に大きな影響を及ぼしています。この価格上昇の主な要因は以下の通りです。
まず、物流コストの増加が挙げられます。2024年には、物流業界での人手不足や人件費の上昇が顕著であり、特にトラック運転手の不足が深刻です。このため、物流コストが上昇し、企業はこのコストを製品価格に転嫁せざるを得ない状況にあります。
次に、原材料費の高騰です。天然ゴムや合成ゴムの価格は、円安や東南アジアでの気候異変による生産不安定性の影響を受けています。特に天然ゴムの価格は過去5年で最高値を記録しており、これが製品価格の上昇を直接的に引き起こしています。
さらに、エネルギーコストの上昇も無視できません。ガソリン代や電力料金の高騰は、製造コスト全体を押し上げる要因となっています。
また、自動車産業からの需要も大きな要因です。自動車用タイヤなど、ゴム製品の約70%が自動車関連で消費されており、EV(電気自動車)やハイブリッド車の普及が進む中で、新たな需要が生まれています。
政策的な要因も影響を与えています。EUによる森林破壊ゼロ法案など、新たな規制が天然ゴム製品のコストを押し上げており、これが市場全体に影響を与えています411。
これらの要因が重なり合い、2024年も原材料費は高騰し続ける見込みです。企業はこの状況に対応するため、効率化策や代替材料の検討を進める必要があります。市場参加者は注意深く動向を見守り、持続可能性や品質向上に向けた戦略を強化することが求められています。
⑱十川ゴム、半導体市場向け製品拡大
十川ゴムは、半導体装置向けのゴム製品の開発を強化し、成長市場への展開を加速させています。
この動きは、半導体産業の急速な成長とその需要に応えるための戦略的な取り組みです。
まず、半導体市場は近年、特にデジタル化やIoT(モノのインターネット)の進展により急成長しています。この市場では、高性能で信頼性の高い部品が求められており、十川ゴムはそのニーズに応えるために特化したゴム製品を開発しています。
具体的には、半導体製造装置に使用されるゴム部品やシール材などが含まれます。
次に、十川ゴムがこの分野での開発を強化する理由として、競争力の維持と市場シェアの拡大が挙げられます。半導体業界は競争が激しく、新しい技術や材料が次々と登場しています。
そのため、企業は常に革新を追求しなければなりません。
十川ゴムは、研究開発への投資を増やし、高度な技術を持つ製品を提供することで、他社との差別化を図っています。
さらに、この取り組みは環境への配慮とも関連しています。
持続可能な製品開発が求められる中で、十川ゴムは環境負荷を低減する材料や製造プロセスの採用にも注力しています。これにより、顧客からの信頼を得るとともに、企業としての社会的責任も果たすことができます。
総じて、十川ゴムの半導体市場向け製品拡大は、業界の成長に対応するための重要な戦略であり、高品質な製品提供と持続可能性への取り組みが鍵となっています。このような動きは、今後も同社の成長を支える要素となるでしょう。
⑲弘進ゴム、工作機械市場での拡大
弘進ゴムは、工作機械向けのゴム製品開発に注力し、国内外でのシェアを拡大しています。
⑳NOK、シール製品の新工場建設
NOK株式会社は、インドのパンジャーブ州モリンダに新たな自動車向けシール製品の製造工場を建設しました。この工場は、2024年9月に竣工し、2025年1月から稼働を開始する予定です。
新工場の面積は13,082㎡で、エンジンシール、バルブステムシール、ダストカバー、Oリングなどの製品を製造します。
この「モリンダ工場」は、NOKグループのインドにおける生産拠点として位置づけられ、既存のバスマ工場から生産設備を移設する形で設立されました。これにより、インド国内や在インドの日系・欧米系自動車メーカー向けに供給体制を強化する狙いがあります。
新工場では自動化設備が導入され、2024年度比で約10%の増産が見込まれています。また、環境への配慮も重視されており、屋上には1.5MWの太陽光発電装置と最新の雨水利用装置が設置されています。これにより、持続可能な生産体制を構築することが目指されています。
NOKグループは「Essential Core Manufacturing」という理念のもと、安全で快適な社会の実現に貢献することを目指しており、この新工場もその一環として位置づけられています。
この新しい供給拠点の設立は、NOKグループがグローバルな供給体制を強化し、
競争力を高めるための戦略的な一環です。特にインド市場は成長が期待されており、この新工場によって現地ニーズに迅速に対応できる体制が整います。
これにより、NOKグループは自動車部品市場での地位をさらに強固なものとし、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
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