住友理工株式会社は、1929年の創業以来、高分子材料技術を基盤に、
自動車用防振ゴム、インフラ向け製品、エレクトロニクスやヘルスケア分野など
幅広い製品を提供しています。
特に、自動車部品や環境に優しい製品を通じて、持続可能な社会に貢献しています。
この記事では、住友理工の革新的な技術、製品展開、そして未来戦略について詳しく解説し
環境技術とグローバル展開の重要性に迫ります。
会社概要と沿革
- 商号: 住友理工株式会社
- 設立: 1929年12月20日
- 資本金: 121億45百万円
- 本社所在地: 名古屋市中村区名駅一丁目1番1号 JPタワー名古屋 Google Maps
- 従業員数: 連結で25,692人、単独で3,231人(2024年3月末現在)
住友理工は、1954年に自動車用防振ゴム事業に参入し、1994年には東京証券取引所に上場しました。2014年には商号を「住友理工」に変更し、グローバルなブランドとしての地位を確立しました。
経営状況
直近5年間の売上高(百万円)と営業利益率(%)と純利益率(%)をまとめました。
年度 | 売上高 (百万円) | 営業利益率 (%) | 純利益率 (%) |
---|---|---|---|
2020年3月期 | 445,148 | 2.00 | 0.20 |
2021年3月期 | 397,940 | 0.06 | -1.24 |
2022年3月期 | 445,985 | 0.25 | -1.42 |
2023年3月期 | 541,010 | 3.06 | 1.23 |
2024年3月期 | 615,449 | 5.52 | 3.03 |
2021年度,2022年度はCOVID-19の影響もあり業績が低迷しておりましたが
2023年度はCOVID-19の終息と共に業績が回復し成長へのV字回復を果たしました。
この成長は、自動車生産台数の回復や円安による為替効果が寄与しています
2024年3月期の業績 売上高615,449百万円、営業利益33,977百万円、最終利益18,641百万円と、
前年同期比で大幅に増加しました。
2025年3月期の見通し 売上高625,000百万円を見込んでおり、安定した成長を続けています。
自己資本比率は44.4%、ROEは10.26%と改善傾向にあります。
住友理工の革新技術と製品展開
住友理工は、さまざまな分野で革新的な製品を提供しており、
主に①自動車製品 ②インフラ製品 ③住環境製品 ④エレクトロニクス製品 ⑤ヘルスケア製品
の5つの事業領域を主軸として経営しております。
自動車製品
住友理工は、自動車業界において多様な製品を提供しています。以下に各製品の詳細をまとめます。
防振ゴム
住友理工の防振ゴムは、エンジンや路面からの振動を効果的に吸収し、快適な車内環境を実現します。エンジンマウントやサスペンションブッシュなどがあり、
振動を抑えることで操縦安定性を向上させます。
また、軽量化部品やアクティブ製品も開発されており、環境への配慮も考慮されています。
ホース
住友理工の自動車用ホースは、耐熱性や耐油性に優れ、エンジン周辺や燃料タンクで使用されます。
燃料系や水系など多様な用途に対応し、高い耐久性と安全性を提供します。
環境対応型製品の開発も進められており、グローバルな生産体制を構築しています。
制遮音品/放熱防音材
住友理工は、MIF技術を用いた制遮音品を提供し、放熱性能と防音性能を両立させています。
特に電気自動車のモーター音を抑えるために開発され、静音化と放熱対策を同時に実現します。
これにより、車内の静粛性が向上し、快適なドライブ体験を提供します。
住友理工の「MIF技術」って何?
という方多いと思いますので簡単に解説します。
住友理工のMIF(Magnetic Induction Foaming)技術は、
自動車産業における放熱性と防音性を兼ね備えた革新的な成形技術です。
この技術は特に電動化が進む自動車において静音化と熱管理のニーズに応えるために開発されました。
MIF技術の主な特徴は、ポリウレタンフォーム内に磁性粒子を配向させることで
熱伝導率を大幅に向上させる点です。
磁場を利用して磁性粒子を鎖状に連結し、熱の伝導経路を形成することで
従来のポリウレタンフォームと比較して10倍から50倍の放熱性能を実現しています。
電装部品やモーターなどの発熱源からの熱を効率的に放散しつつ、騒音を抑えることが可能です。
内装品
住友理工の内装品は、ヘッドレストやアームレストなど、
快適性と安全性を兼ね備えた製品を提供しています。
独自のウレタン材料を使用し、高品質な製品を実現しています。
制遮音品も含まれ、車内の静粛性を高めています。
シール
自動車用シール材は、ワイヤーハーネスの防水を実現し、高い信頼性を確保します。
LIM成型などの精密ゴム成型技術を駆使し、
コネクタシールやワイヤーシールが重要な役割を果たしています。
環境への配慮も重視され、新技術の開発が進められています。
ゴム業界でも注目の技術LIM成型について
わかりやすく解説します。
LIM成型(Liquid Injection Molding) 液状シリコーンゴムを用いた射出成形技術で
主にシリコーン製品の製造に利用されます。
このプロセスは、主材と硬化剤の2つの液状素材を混合し、金型内に注入して硬化させることで
自由な形状の製品を作成します。以下にLIM成型の主要な特徴と利点をまとめます。
LIM成型のプロセス
- 材料の準備: 液状シリコーンゴム(LSR)を使用し、主材と硬化剤を正確な比率で混合します。
この材料は熱硬化性であり、耐熱性や耐寒性に優れています。 - 射出成形: 混合された材料は、専用の射出成形機を使用して金型内に注入されます。
液体状態であるため、複雑な形状や薄肉部品の成形が可能です。 - 硬化: 注入後、材料は金型内で化学反応により固化し、最終的な製品が形成されます。
このプロセスは通常、数分で完了します。 - 脱型: 硬化した製品は金型から取り出されます。
自動化された脱型装置が使用されることが多く、効率的な生産が実現します。
LIM成型の利点
- 高精度な成形: 液状シリコーンは流動性が高く、複雑な形状や薄肉部品を精密に成形できます。
- 大量生産に適している: 成形サイクルが短く、大量生産が可能です。自動化されたプロセスにより、一貫した品質が保たれます。
- 異物混入のリスク低減: 成形工程がクローズドシステムで行われるため、異物混入のリスクが低く、安全性が高いです。
- 環境への配慮: ノーバリ(バリなし)やランナーレス成形が可能であり、廃材処理が不要となるため環境負荷が軽減されます。
LIM成型の短所
- 初期コストが高い: 専用金型や設備投資が必要であり、小ロット生産には不向きです。
- 色替えが難しい: 色を変更する際には機械の清掃や調整が必要となり、手間がかかります。
主な用途
住友理工でも活用しているLIM成型は医療機器、自動車部品、家電製品など
多岐にわたる分野で利用されています。特に、防水性能や生体適合性、高精度な成形能力が求められる製品に最適な技術です。
燃料電池自動車向け製品
住友理工は、燃料電池自動車向けにセル用ガスケットや水素ホースを提供しています。
これらの製品は、水素の安全かつ効率的な利用を支え、トヨタの「MIRAI」にも採用されています。
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環として開発されています
インフラ製品
住友理工のインフラ分野における代表的な製品には、
鉄道車両用防振ゴムと橋梁用ゴム支承があります。
これらの製品は、それぞれ異なる用途と機能を持ちながらも、
共通して住友理工の技術力と信頼性を象徴しています。
鉄道車両用防振ゴム
鉄道車両用防振ゴムは、鉄道車両の台車部分に取り付けられ、
走行中の振動を大幅に軽減する役割を果たしています。
この防振ゴムは、新幹線や在来線など、国内外のほとんどの鉄道車両に採用されており、
快適な乗り心地を実現するために重要な要素となっています。
具体的には、鉄道車両用防振ゴムは「足まわり」に使用され、車両の重さを支えつつ
振動を効果的に吸収します。
住友理工の防振ゴムは、特に軸バネ円筒積層ゴムやリンク用ブッシュなどが使用されており
これらは高い耐久性と優れた振動吸収性能を持っています。
橋梁用ゴム支承
橋梁用ゴム支承は、地震時の耐震性能を向上させるために設計された重要なインフラ製品です。
主な製品には、高減衰ゴム支承「HDR-S」と高性能型高減衰ゴム支承「HDReX」があります。
HDReXは、ポリマーの構造最適化と配合材の開発により、
従来の高減衰ゴムよりもさらに優れた減衰性能を持っています。
また、住友理工はディスク型高面圧ゴム支承「DRB」も提供しており
これは高硬度・高弾性のウレタンゴムを使用しており、耐オゾン性や耐寒性にも優れています。
これらの製品は、地震による慣性力を分散・減衰させる機能を持ち
橋梁の耐震性能を向上させる役割を果たしています。
住環境製品
TRCダンパーとリフレシャインフィルムの技術概要
TRCダンパー 住友理工が開発した地震対策用制震システムで
木造住宅や高層ビルの揺れを抑えるために設計されています。
特殊な粘弾性材料を使い、地震エネルギーを熱エネルギーに変換することで揺れを低減します。
繰り返しの地震にも対応し、最大50%の揺れを低減することが確認されています。
施工も簡便で、リフォーム時にも低コストで導入可能です。
リフレシャインフィルム 住友理工が提供する高透明な窓用遮熱・断熱フィルムです。
ナノ技術を活用し、夏場は近赤外線を90%以上、冬場は室内の遠赤外線を68%反射することで
室温調整とエネルギー効率の向上を実現。紫外線も99%以上カットし、飛散防止機能も備えています。
エレクトロニクス製品
帯電ロールについて
帯電ロール プリンターや複写機に使用され、感光体ドラムを均一に帯電させ
静電気を使って画像や文字を転写します。
環境依存性を低減しながら高い導電性を維持する設計が重要です。
AquaGreenについて
感光性水現像フレキソ版「AquaGreen」 住友理工が開発した環境に優しい印刷技術です。
水を使った現像により、VOC排出を削減し、175lpi/1%の高精細な印刷を実現します。
短時間で製版が完了し、独自の廃液処理技術を使って現像液を再利用可能にするため
環境負荷を軽減しつつ高品質な印刷が可能です。
この2つの技術は高い性能と環境配慮を両立させており、持続可能な印刷技術の発展に寄与しています。
ヘルスケア製品
住友理工のヘルスケア分野では、スマートラバーセンサを用いた体圧分布センサーが医療や介護の現場で重要な役割を果たしています。
以下に、SRソフトビジョンとSRアクティブマットレスの特徴を詳述します。
SRソフトビジョン
SRソフトビジョン 体圧分布をリアルタイムで「見える化」するセンサー技術を用いた装置です。
主に医療や介護の現場で使用され、患者の体圧を数値化することで、
褥瘡(床ずれ)のリスク管理やリハビリテーションにおける評価を支援します。
柔らかい導電性エラストマーで作られたセンサーシートは、利用者に優しい触感を提供し、耐久性にも優れています。多様なラインナップがあり、数値版、半身版、全身版、足圧版などが選択可能です。
SRアクティブマットレス
SRアクティブマットレス 体圧を自動的に測定し、内蔵されたエアセルがリアルタイムで圧力を分散させる機能を持つエアマットレスです。
九州大学との共同研究により開発され、体圧分散を自動的に行うことで、局所的な圧力集中を緩和し、床ずれのリスクを低減します。
3つの使用モード(見守りモード、体圧分散モード、背上げモード)があり、
利用者の体格や寝姿勢に応じて調整されます。
介護者の負担を軽減し、最大利用者体重100kgまで対応しています.
まとめ
住友理工は、自動車、インフラ、住環境、エレクトロニクス、ヘルスケアの各分野において
革新的な技術を駆使した製品を提供し続けています。
持続可能な社会に貢献するため、環境技術や安全性向上のための製品開発に力を入れており
今後の成長が期待されます。
未来戦略
2029年を見据えた「住友理工グループVision」
2025年までの中期経営計画「2025P」
の2つの戦略を策定しています。
住友理工グループVision(2029V)
このビジョンは、創立100周年を迎える2029年に向けて、
社会課題の解決に貢献するリーディングカンパニーを目指しています。
具体的には、「素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える」という目的のもと
技術革新を通じて持続可能な社会の実現を目指します。
中期経営計画(2025P)
2025Pでは、収益力向上と持続的成長に向けた基盤強化がテーマです。
特に、人的資本の育成に注力し、従業員の成長を促す環境を整備します。
また、連結売上高6,200億円、事業利益280億円を目指し、構造改革や新規事業の収益化に取り組みます
まとめ
住友理工は、高分子材料技術を駆使し、自動車、防振ゴム、インフラ製品などの開発を通じて
幅広い分野で貢献しています。
特に、自動車分野における電動車用の技術やインフラ耐震技術
ヘルスケア製品の革新が注目されています。
持続可能な社会に向け、環境負荷を低減する製品やリサイクル技術の導入を進める一方で
グローバル市場での成長も加速しています。
住友理工は、未来に向けて更なる技術革新と環境貢献を目指しています。
今回はゴム業界では知らない人はいないという超有名企業の「住友理工」について
わかりやすく解説させていただきました。
知れば知るほど魅力的な会社だと思いますので今回の記事を掘り下げてあらためて
調べていただくことをおすすめします。
最後まで読んでいただきまして有難うございました!
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