~組織の生産性を高めるために必要な考え方とは?~
ゴム業界で仕事をする中で気付いたことを
コラムとして執筆していきます。
今回はVol.6【リーダーの本当の仕事は「やらないことを決める」】
というゴム業界のリーダーの方へ向けたコラムを書きます。
リーダーに求められる最大のスキルは、
「何をするか」ではなく、「何をしないか」を決めることです。
組織運営において命令や管理が増えすぎると、組織が肥大化し、生産性が低下するという問題が発生します。リーダーとして本当に優先すべきことは何か。
それを明確にすることで、組織全体の効率を高め、持続可能な成長を促進することができます。
本記事では、パーキンソンの法則やナポレオンのリーダーの4タイプ理論を絡めて、組織運営の課題とその解決策を掘り下げ、実践的なリーダーシップの在り方について考えます。
パーキンソンの法則:仕事と組織は自然に膨張する
パーキンソンの法則は、「仕事は与えられた時間やリソースをすべて使い切る方向に拡大する」という現象を説明する法則です。この現象は、特に組織が大きくなるほど顕著になります。
仕事と組織が膨張する典型的な問題
- 管理職の増加 管理職が増えると、それぞれの管理職が自分の存在意義を示すために部下やプロジェクトを増やそうとします。その結果、実際には不要な仕事やポジションが生まれ、組織は非効率的に膨れ上がります。これが悪循環を生み、結果的にリソースが分散し、本当に重要な業務に十分なリソースを割けなくなります。
- 無駄なタスクの増加 不必要な会議、冗長な報告書作成、複雑な承認プロセスなど、日常的な業務の中に多くの「やらなくてもよい仕事」が潜んでいます。これらのタスクは、時間と労力を奪うだけでなく、従業員のモチベーションを低下させる原因にもなります。
解決策
- 仕事を棚卸しし、削減する意識を持つ
業務内容をリスト化し、「やめるべき業務」「外部委託できる業務」「本当に優先すべき業務」に分類します。 - 優先順位を明確化する
重要な成果を生む業務に集中し、それ以外のタスクを大胆に削減します。
これにより、組織が本来の目的に立ち返ることが可能になります。
ナポレオンのリーダーの4タイプ理論:理想的なリーダーとは?
ナポレオンの理論は、組織や戦略における人材の適材適所を考えるための理論で、兵士を4つのタイプに分類します。この法則は、ナポレオンが戦争において効果的な指揮を行うために用いたもので、現代のビジネスや組織運営にも応用されています。
やる気のある有能
カリスマ性があり、失敗してもくじけない精神力を持つこのタイプは、前線の指揮官や軍曹として適任です。リーダーシップを発揮し、集団を率いる役割を担います。現代では、プロジェクトリーダーやチームマネージャーとして活躍することが期待されます。
やる気のない有能
効率的に仕事をこなし、パターン化や標準化が得意なこのタイプは、幹部や戦略担当として適しています。最小限の手間で最大限の成果を上げることを目指し、業務の効率化に貢献します。現代では、業務プロセス改善や管理職に向いています。
やる気のない無能
能力もやる気もないが、与えられた職務はこなすこのタイプは、前線に送り込まれ使い捨てられることが多いです。指示待ちで創意工夫をしないため、厳しい監視下で動くことが求められます。現代では、ルーチンワークをこなす役割に適しています。
やる気のある無能
自分勝手な判断で行動しがちであり、その結果として組織に多大な不利益をもたらす可能性があります。ナポレオンはこの兵士について「今すぐ殺せ」と述べたとされており、その理由は彼らが行動することで混乱を引き起こすからです。現代では、このような人材はプロジェクトから外されるべきと考えられています。
これらの分類は、人材マネジメントにおいて非常に重要です。特に「やる気のある無能」の存在は組織にとってリスクとなり得るため、その管理方法を考える必要があります。ナポレオンの法則は、組織内で誰がどの役割に適しているかを見極めるための有効な手段となります。
このように、ナポレオンの有能無能法則は、人材配置や組織運営において非常に実用的な理論であり、歴史的背景から現代ビジネスまで幅広く応用されています。
ナポレオン理論=ゼークトの組織論としても有名です。
(出典)https://www.daini-agent.jp/for_dainishinsotsu/column/17205
命令が多すぎると組織は停滞する理由
1. 部下の自主性を奪う
命令が多すぎる環境では、部下は「自分で考える力」を失い、いわゆる指示待ち人間になってしまいます。これにより、部下が現場の状況に応じて即座に判断を下す能力が低下し、柔軟な対応ができなくなります。また、創造性を発揮する余地がなくなるため、新しいアイデアや改善案が生まれにくくなり、組織全体の革新力が失われます。さらに、指示を待つことに慣れた部下は、リーダーに過度に依存するようになり、最終的にはリーダー自身が細かい業務に追われる悪循環を生む可能性があります。こうした状況では、部下の成長機会も奪われ、長期的に見ると人材の質も低下するリスクが生じます。
2. 意思決定が遅れる
命令や管理が過剰になると、承認フローが複雑化し、決定プロセスが遅れることがあります。例えば、些細な業務であっても、複数の段階を経て承認を得る必要がある場合、現場での迅速な対応ができなくなります。このような状況では、顧客の要求や市場の変化に対応しきれず、競争力が低下する可能性があります。さらに、意思決定が遅れることで、時間的な機会損失だけでなく、組織内でのストレスやフラストレーションも増大します。特に迅速な対応が求められるビジネス環境においては、こうした遅延がビジネスチャンスを逃す大きなリスクにつながります。
3. 士気が低下する
細かすぎる指示や過剰な管理は、従業員のモチベーションを著しく低下させます。自分の意見やアイデアが尊重されない環境では、従業員は次第に「自分の仕事が意味を持たない」と感じるようになります。このような状況は、結果的に仕事への意欲を失わせ、業務パフォーマンスが低下するだけでなく、離職率の増加を招く原因となります。また、過剰な指示や管理が続くと、従業員はリーダーに対する不満や反発心を抱くこともあります。これにより、組織内の人間関係が悪化し、協力体制が崩れるといった悪影響が広がります。
「やらないことを決める」リーダーシップの実践方法
リーダーが「やらないこと」を決め、組織全体を最適化するためには、次のような具体的なステップが効果的です。
1. 仕事を棚卸しする
- 現在の業務をすべてリスト化し、「やめるべき業務」「委任すべき業務」「重要な業務」に分類します。
- 業務を評価する際には、「この仕事が組織の目標に直接貢献しているか」を基準に判断します。
- 不要な業務は思い切って廃止するか、外部委託を検討します。
2. 重要な目標に集中する
- 80:20の法則を活用し、成果の80%を生む20%の業務にリソースを集中させます。たとえば、顧客満足度に直接影響するプロジェクトや、組織の競争力を高める活動を優先します。
- その他の業務については、優先順位を下げ、可能であれば削減します。
3. シンプルなルールを設定する
- 複雑な承認フローや手続きを見直し、最小限の手続きで済むようにします。たとえば、「承認は1段階のみにする」「会議は30分以内」など、明確でシンプルなルールを設定します。
- 業務プロセスを簡略化することで、全体のスピードを向上させます。
4. 部下を信頼して任せる
- 権限委譲を進め、部下が自律的に動ける環境を整備します。部下が責任を持って業務に取り組むことで、成長機会が増え、組織全体の能力も向上します。
- 必要な場面でフォローを行い、部下の失敗を許容しながら成長を促す文化を醸成します。
5. 不要な会議やプロジェクトを排除する
- 定例会議の頻度を減らし、必要性が高いテーマに集中した短時間の会議を実施します。たとえば、「全員のスケジュールを確認するだけの会議」は、電子ツールでの共有に切り替えるといった工夫が効果的です。
- プロジェクトについても、進捗が芳しくない場合は勇気を持って中止を決断します。
まとめ:リーダーの役割は「減らすこと」にある
リーダーの本当の役割は、命令や管理を増やして組織を複雑化させることではありません。
「やらないこと」を決め、組織の効率を最大化することがリーダーの最重要課題です。
リーダーが実践すべきポイント
- パーキンソンの法則を理解し、仕事や組織が自然に膨張することを防ぐ。
- ナポレオンのリーダーの4タイプ理論に学び、「有能で怠惰なリーダー」を目指す。
- 業務の優先順位を明確にし、不要な業務を削減することで、組織が本来の目的に集中できる環境を整える。
リーダーとして、あなたが次に行うべきは、「何をやらないか」を決めることです。
それが、組織の未来を大きく変える第一歩になるでしょう。
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