
ゴム業界で働く中で気付いた事を
日々コラムとして執筆していきます。
今回はVol.51段ボール選定で製品品質を守る|ゴム業界における強度・仕様・契約の実務解説
というコラムを書いていきます。
ゴム業界では、成形品やゴム部品の出荷・保管・輸送において段ボールは欠かせない資材です。しかし、段ボールの選定を誤ると、輸送中の製品破損、段積み時の潰れ、保管中の湿気による変形など、品質トラブルの原因になります。
本記事では、ゴム業界における段ボールの基礎構造と強度、実際の仕様決定・購買契約に必要な実務ポイントを詳しく解説します。
1. ゴム業界で求められる段ボールの役割と特徴
ゴム製品には重量があるものが多く、また湿度や衝撃による変形を受けやすいため、使用する段ボールには以下のような特徴が求められます。
使用目的 | 求められる段ボールの性能 |
---|---|
ゴム部品の輸送 | 高い耐荷重性・耐湿性・緩衝性 |
成形品の保管 | 寸法安定性・長期強度維持 |
海外向け梱包 | 高強度・防湿・撥水性 |
軽量品の仕切り梱包 | 薄くて低コストな設計 |
2. 段ボールの構造と基礎用語の理解
段ボールの性能は、構造と使用紙材の組み合わせで決まります。
主な構成要素:
- ライナー紙:外層の紙。Kライナー(クラフト紙)は強度・耐湿性に優れ、Jライナー(再生紙)は価格重視。
- 中芯紙:波形構造を支える中心部。吸湿率や剛性が全体の強度に影響。
- フルート(波形):
- Aフルート:厚くてクッション性が高い
- Bフルート:薄くて高剛性
- ABフルート:両者を組み合わせた構造(強度と緩衝性を両立)
3. 段ボールの「強度」がゴム製品を守る鍵
※g表記は1㎡あたりの重さ。
圧縮強度(耐荷重性)
段積み保管中や輸送中に箱が潰れないかどうかを左右する性能です。
**JIS Z 0212(段ボール箱の圧縮試験方法)**に基づき、段ボールの耐圧強度は明確に数値化する必要があります。
例:1箱あたり20kgの製品を6段積み → 120kg以上の垂直荷重に耐える強度が必要。
耐破裂強度
段ボール内部からの圧力(角のあるゴム成形品など)に対する破裂抵抗性です。強度の低い段ボールは破損リスクが高まります。
接着強度(層間剥離の防止)
輸送中や湿度の変化により、ライナー紙と中芯紙が剥がれることがあります。
接着不良は箱の変形や積載崩れを引き起こすため、試作段階でのピールテストやサンプル評価が推奨されます。
耐湿性
ゴム製品は湿気による性能劣化を受けやすいため、段ボールも低含水率の材料、撥水加工品、防湿ライナーなどを選定すべきです。保管環境との連携も重要です。
4. 購買前に確認すべき仕様と品質条件
段ボールを外注購入する際には、仕様の明文化と品質条件の共有が不可欠です。
最低限確認すべき仕様項目
項目 | 内容例 |
---|---|
材質 | ライナー紙の種類(Kライナー、Jライナー)、中芯紙のグレード |
構造 | 3層構造(シングル)、5層構造(Wフルート)など |
寸法 | 内寸・外寸、許容公差(±1〜2mm) |
フルート種類 | A、B、ABなど、製品重量に応じて選定 |
印刷 | ロット番号・バーコード・社名等の有無 |
圧縮強度 | JIS準拠試験結果または目標数値の明記 |
その他 | 使用温湿度範囲、保管条件、納品形態など |
5. 契約書・仕様書で定めるべき品質管理項目
調達契約では、以下の内容を明記することで品質事故・トラブルを未然に防げます。
- 承認サンプルの提出と保管
- 品質試験報告書の添付(圧縮・破裂・接着等)
- 不良品の返品・交換対応条件(例:0.5%超で返品対応)
- ロット間ばらつき防止(原紙管理や製造条件の均一化)
- 印刷・版のデータ管理と改版ルール
6. 現場からの聞き取りが品質トラブルを防ぐ
すべての仕様を事細かに契約に盛り込むことは難しいですが、最低限、現場から重要特性を正確に聞き取り、仕様書に反映することが不可欠です。
聞き取りのポイント例:
- 内容物の最大重量と積載段数
- 製品の形状や角の有無(破裂強度への影響)
- 使用する自動梱包機の型式・寸法要件
- 保管・輸送時の温湿度条件
- 印字やラベルの必要性(製品管理上)
7. よくあるトラブルと実務対策
トラブル例 | 原因と対策 |
---|---|
段積み中に段ボールが潰れた | 圧縮強度不足 → 試験成績の確認と仕様見直し |
梱包機で詰まり発生 | 寸法精度不良 → 初回サンプル承認を必須化 |
ラベル印字ミス | 印刷版の誤使用 → 版データの管理強化 |
湿気で変形 | 防湿仕様の不足 → 撥水加工や外装ビニールの併用を検討 |
まとめ:段ボールは品質保証の一部である
段ボールは単なる消耗品ではなく、ゴム製品の品質保証・信頼性維持に直結する保護資材です。
強度設計・材質選定・契約内容を適切に管理することで、輸送クレームや現場トラブルを未然に防ぐことが可能になります。
調達部門と製造現場が連携し、実務に即した段ボール選定・購買の体制構築が、安定生産と顧客満足の第一歩です。
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