【基礎知識】合成ゴムAEM（エチレン・アクリルゴム）とは？市場、特性、価格、配合設計、製造メーカーを徹底解説

AEM（エチレン・アクリルゴム）とは？

**AEM（Acrylic Ethylene Rubber、エチレン・アクリルゴム）**は、
エチレンとアクリル酸エステルの共重合により得られる合成ゴムで、
自動車産業や産業用途で重要な役割を果たしています。
特に、耐熱性や耐油性に優れ、エンジン部品やオイルホースの製造に広く使用されています。

代表製品: デュポンが開発したベイマック（Vamac®）シリーズは、AEMの代表的な製品です。特に、ベイマックLSは低温環境でも柔軟性を保つため、寒冷地での自動車部品に最適です。

※ゴム業界にいるとAEM=デュポンでほぼ独占商売となってしまっております。

AEMの主な特性

AEMは、他のゴム素材に比べて以下の特性を持ちます。

特性	説明
耐熱性	最大175℃までの環境に耐え、エンジン周辺での使用が可能
耐油性	オイルや燃料に対して高い耐性を持つ
耐候性	オゾンや紫外線による劣化に強い
弾性	柔軟性と弾力性を兼ね備え、ホースやシール材に適用
電気絶縁性	電気部品の防振やシール材としても利用される

AEMの市場規模と成長予測

AEM市場は2024年現在、主に自動車産業を中心に拡大しています。
特に電動車やハイブリッド車の普及により、
耐熱性・耐油性が求められる部品の需要が高まっています。
産業機械や電力インフラでの使用も増加しており、
AEM市場は今後も持続的な成長が期待されています。

市場規模推移（推定）

年度	市場規模（推定）	年平均成長率（CAGR）
2020	7億ドル	4.5%
2024	10億ドル	5.2%
2028	13億ドル	5.5%

AEMの価格帯と影響要因

AEMの価格はキログラムあたり30～70㌦の範囲で変動します。
価格は需要供給のバランスや製造コスト、石油価格の変動に影響されます。

価格推移（2019〜2024）

年度	価格（平均、kg当たり）
2019	30ドル
2021	36ドル
2024	42ドル

AEMの種類と使用用途

AEMにはさまざまなグレードが存在し、使用される用途によって異なります。
例えば、自動車のエンジン部品やトランスミッションに使用されるベイマックLSは、
高温環境でも性能を維持し、長期間使用できる特性があります。

AEMの代表的な製品とその用途

製品名	特徴	使用用途
ベイマックLS	低温での柔軟性と高い耐油性	エンジンホース、シール材
ベイマックD	耐熱性と耐油性を強化	オイルシール、トランスミッション部品
ベイマックG	耐候性・耐オゾン性が高い	外装部品、ワイヤーケーブル

AEMの代表的な製造メーカー

AEMを製造する主な企業は、世界的に認知されているゴムメーカーです。以下は、AEMの主要な製造企業です。

メーカー名	本社所在地	代表的な製品
デュポン（DuPont） ※セラニーズへ事業譲渡	アメリカ	Vamac® シリーズ
アルケマ（Arkema）	フランス	アクリルゴム製品
安徽中鼎（Anhui Zhongding）	中国	自動車用ゴム部品

※ゴム製品製造メーカーも含む

ワタナベ

AEMのほぼ独占企業デュポンの代表製品である

ベイマックに関して深堀してみました。

私AEM=デュポンという長い間の認識がありましたが

2022年にセラニーズという会社へAEM事業も譲渡されています。

「買収詳細とセラニーズに関してまとめます」

セラニーズ（Celanese Corporation）は、2022年にデュポン（DuPont）からモビリティ＆マテリアルズ事業（Mobility & Materials, M&M）を買収する契約を締結しました。
買収額は約 115億ドル とされており、2022年6月に発表されたこの取引は、
2023年2月に正式に完了しました。

（セラニーズ会社概要）

/https://www.celanese.co.jp/about-us/celanese-japan

1. 買収の背景

デュポンのモビリティ＆マテリアルズ事業は、主に自動車、エレクトロニクス、工業用途に向けたエンジニアリング樹脂や高性能ポリマーの製造・販売を行っています。
デュポンは、企業のポートフォリオ再編の一環として、この事業を売却することを決定しました。
デュポンは、より高成長分野に焦点を当てるために、資本を集中させる戦略をとっており、
特にエレクトロニクスやバイオサイエンスに注力しています。

一方でセラニーズは、買収を通じてエンジニアリング材料分野でのポートフォリオを強化し、より幅広い市場にサービスを提供できる体制を構築することを目的としていました。

2. 買収の詳細

買収額: 約115億ドル
事業内容: 高機能ポリマー、エンジニアリング樹脂、アセタール、ナイロン、ポリアミドなどの先端材料が含まれる。
買収完了: 2023年2月

3. 影響と戦略的意義

セラニーズは、エンジニアリング材料市場でのリーダーシップを強化することを目指し、自動車産業、電気・電子産業においてより幅広い製品群を提供できるようになります。
また、デュポンの事業を取り込むことで、セラニーズは自社のポートフォリオを大幅に強化し、競争力を高めることができます。
この取引により、セラニーズの年間売上は大幅に増加し、アジア市場を含む世界的な市場展開をさらに拡大することが可能となりました。

4. 今後の展望

セラニーズは、買収した事業を通じて、自動車業界における軽量化素材の需要拡大に対応し、グローバルなサプライチェーンをさらに強化することを目指しています。また、電気自動車や再生可能エネルギー技術の進展に伴い、エンジニアリング材料の需要は今後も増加すると予測されています。

まとめ

デュポンからのモビリティ＆マテリアルズ事業の買収は、セラニーズのエンジニアリング材料市場における成長を大きく後押しするものであり、両社の戦略的な利益に寄与する重要な取引です。

この買収は、特に自動車産業における新たな材料需要に対応するための重要な一手とされています。

ベイマック（Vamac）は、デュポン（DuPont）が製造しているエチレン・アクリルゴム（AEM）のブランドです。AEMは、主に自動車業界で使われる耐熱性や耐油性の高い合成ゴムで、
さまざまな用途に対応するように複数のグレードが存在します。
以下に、代表的なベイマックの種類別特性と価格、それぞれの価格推移を表形式でまとめます。

ベイマックの種類別特性と価格

ベイマックの種類	特性	価格 (2023年時点)	価格推移 (過去5年)
ベイマック G	優れた耐熱性、耐油性、耐薬品性、主に自動車のガスケットやホース用	約５,500円/kg	安定した価格推移、年平均2-3%上昇
ベイマック D	柔軟性と低温特性に優れ、特に自動車のエンジンマウントや防振部品に使用	約６,000円/kg	市場需要の増加で、過去3年間で約10%の上昇
ベイマック B	高い耐摩耗性、耐油性、エンジンの部品やトランスミッションのシールに適用	約５,700円/kg	価格は安定、年間1-2%の微増
ベイマック Ultra	非常に高い耐熱性と耐油性、高性能エンジンやターボシステムに使用	約７,500円/kg	5年間で約15%上昇
ベイマック XLS	低温での優れた性能、特に寒冷地向けの自動車部品に対応	約６,500円/kg	需要増加により約8%の上昇

価格推移の概要

過去5年間で、ベイマック製品は全体的に価格が上昇していますが、特に自動車業界のEV化や環境規制の強化により、耐熱性・耐油性に優れたグレード（Vamac UltraやVamac XLS）の需要が急速に高まっています。これにより、価格上昇率も高くなっています。

ベイマック Gとベイマック Bは比較的安定しており、年率2-3%の価格上昇。
ベイマック UltraやVamac XLSは特殊な用途に使われるため、価格上昇が顕著で、5年間で約10-15%の値上がりが見られます。

AEMの代表的な配合設計

AEMゴムの配合設計は、その用途に応じてさまざまな特性を引き出すために工夫されています。
以下は、代表的な配合例です。

代表的なAEMの配合設計例

成分	役割	配合比率（重量%）
AEM基材	主成分	100
架橋剤（過酸化物系）	架橋反応を促進	2-5
フィラー（カーボンブラック）	強度や硬度の調整	30-50
可塑剤（プロセスオイル）	弾性と加工性の向上	5-10
酸化防止剤	耐老化性を向上	1-3

このような配合設計により、AEMの特性を最適化し、様々な産業用途に対応する製品が製造されています。

まとめ

AEM（エチレン・アクリルゴム）は、耐熱性、耐油性、耐候性に優れた合成ゴムであり、
主に自動車産業を中心に広く利用されています。
市場は今後も成長が期待されており、製造メーカーは品質向上やコスト削減を図りながら、
さらなる市場シェアの拡大を目指しています。
代表的な製品にはデュポンのベイマックシリーズがあり、各グレードに応じた用途に対応しています。