
ワタナベ
ゴム業界で働く中で気付いた事を
日々コラムとして執筆していきます。
今回はVol.46ゴム成型における金型温度制御と熱板の管理技術|構造・方式・改善提案まで網羅解説
というコラムを書いていきます。
以下は、ゴム成型における金型温度管理と熱板(加熱板)の制御・構造・トラブル対策・実践的な改善提案を含めて、より詳しく・実務的に解説した完全版です。生産性向上・品質安定化の両立を目指す現場に最適な内容です。
ゴム成型における金型温度制御と熱板の管理技術|構造・方式・改善提案まで網羅解説
1. 金型温度管理の重要性と基本原理
ゴムの加硫反応は時間・温度・圧力の三要素で決まり、特に温度は反応速度と品質に大きく影響します。金型温度が一定でないと以下のような問題が生じます。
品質トラブル例
- 硬さや引張強度のばらつき
- 気泡や焼けムラ
- 脱型時の変形・反り・寸法不良
金型温度を狙い通りに維持・制御することで、製品の物性・見た目・再現性が安定し、成型サイクルの短縮も実現できます。
2. 熱板(加熱板)の構造と種類
熱板はプレス機の構成部品で、金型を上下から加熱し、成型に必要な温度を保ちます。内部にヒーター・配管・温度センサーが組み込まれています。
主な加熱方式
加熱方式 | 特徴 | 適用範囲 |
---|---|---|
電熱式 | 内蔵ヒーターで直接加熱。構造簡単。 | 試作、小型機 |
オイル循環式 | 外部ヒーターで温めた油を熱板に循環。温度均一性が高い。 | 中~大型量産機 |
蒸気式 | 蒸気を配管で熱板に供給。昇温が早いが制御性が低い。 | 旧式設備、簡易品向け |
3. 温度制御方式と特徴
3-1. オンオフ制御(簡易制御)
- 構造が簡単で安価だが、設定温度±数度のブレが常に発生
- 上限に達したらヒーターOFF、下限になったらONの繰り返し
- 精密な物性管理が不要な製品に使用される
3-2. PID制御(高精度制御)
- 比例(P)・積分(I)・微分(D)制御により、温度変化をなめらかに制御
- 一定の温度を±1℃以内に維持可能
- 寸法精度や機械的強度に影響する製品に最適

(引用)https://emb.macnica.co.jp/articles/15859/
4. 実務での改善提案:5つの視点
(1)ゾーン分割制御の導入
- 金型を上下左右で分割制御し、それぞれのゾーンにセンサー設置
- 熱ムラを減らし、複雑形状でも安定加硫を実現
(2)予熱運転の見直し
- 成型開始前に30分程度の予熱保持を設けることで立ち上がり不良を減らす
- 特に厚物成型で効果が大きい
(3)データ記録と見える化
- 熱板温度を常時記録し、グラフでトレンド監視
- 異常時にすぐ原因追跡できる体制へ
(4)定期的な温度キャリブレーション
- 接触式または赤外線温度計で年1回以上の較正
- 特に、PIDセンサーの劣化や設置ズレによる実温との差異に注意
(5)IoT化による遠隔モニタリング
- 最近はクラウド連携やPLC遠隔制御で、ライン停止前に異常予測できる仕組みも普及
- 特に中国拠点など遠隔監視が必要な工場では効果大
5. よくあるトラブルと対策
トラブル | 原因 | 対策 |
---|---|---|
焼けムラ | ヒーター断線、ゾーン偏差 | センサー位置調整、加熱方式の見直し |
寸法不良 | 温度過剰/不足 | PID制御導入、熱板メンテナンス |
硬度不安定 | 温度変動が大きい | オンオフ制御→PID切替 |
長時間加熱 | 温度上昇遅延 | オイル循環系の配管劣化点検 |
6. 導入事例・効果
改善内容 | 効果 |
---|---|
電熱式→オイル循環式に変更 | 寸法安定性20%向上、不良率30%減 |
オンオフ→PIDに変更 | 硬度のばらつき±5→±2に改善 |
ゾーン分割制御導入 | 複雑形状の成型歩留まりが15%上昇 |
IoT温度監視導入 | 金型の予知保全が可能に、ダウンタイム削減 |
まとめ
項目 | 要点 |
---|---|
熱板の加熱方式 | 電熱、オイル循環、蒸気式が主流 |
制御方法 | オンオフ制御は簡易、PID制御が高精度 |
改善提案 | ゾーン分割、予熱、可視化、キャリブレーション、IoT活用 |
管理目標 | 金型表面温度の±1〜2℃管理が理想 |
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