【基礎知識】シリコンゴムとは?市場、特性、価格、配合設計、製造メーカーを徹底解説

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シリコンゴムは、耐熱性や耐寒性、柔軟性、生体適合性に優れ、多くの産業で利用される汎用性の高い素材です。自動車部品、医療機器、家電製品、食品用具など幅広い用途で活躍し、その市場規模も拡大しています。本記事では、シリコンゴムの市場動向、特性、価格帯、配合設計、主要製造メーカー、そして用途や未来展望について詳しく解説します。これを読めば、シリコンゴムの基礎知識から実践的な活用法までが一目で分かります!

シリコンゴムとは?

(出典)https://plastics-material.com/si/

シリコーンゴムは、シリコーンポリマーを主成分とする合成ゴムであり、その特性から多くの産業で広く利用されています。特に、耐熱性、柔軟性、生体適合性に優れているため、自動車、医療、家電、食品業界など、さまざまな分野で重宝されています。

シリコーンゴムの最大の特徴は、その耐熱性です。
一般的に、シリコーンゴムは-40℃から300℃の温度範囲で使用可能であり、高温環境でも物理的特性を維持します。この特性は、自動車のエンジン部品や航空機の部品など、高温にさらされる環境での使用に最適です。

また、シリコーンゴムは非常に柔軟で弾力性があり、変形しても元の形状に戻る特性があります。
このため、シールやクッション材としても広く使用されており、特に高い弾性が求められる用途に適しています。例えば、自動車のガスケットや電子機器の絶縁材として利用されています。

生体適合性もシリコーンゴムの重要な特性です。これは、医療機器や食品接触材料として使用される際に非常に重要です。シリコーンゴムは化学的に安定しており、生体組織と接触してもアレルギー反応を引き起こしにくいことから、カテーテルや創傷ケア製品など、多くの医療用途で利用されています。

さらに、シリコーンゴムは耐候性にも優れています。紫外線やオゾン、湿気などの影響を受けにくく、屋外で長期間使用しても劣化しません。このため、屋外用の製品や建材にも適しています。

化学的安定性もシリコーンゴムの大きな利点です。酸やアルカリ、有機溶剤など、多くの化学物質に対して耐性があり、過酷な環境下でもその性能を維持します。この特性は、化学工業や石油精製装置などでの使用にも適しています。

総じて、シリコーンゴムはその優れた物理的および化学的特性から、多岐にわたる用途で活躍しています。自動車部品から医療機器まで、その柔軟性と耐久性が求められる分野で重宝されており、今後もその需要は増加することが予想されます。


シリコンゴムの市場動向

シリコンゴムの世界市場は、
2023年に約25億ドルと評価されており、2024年には約27億ドル、2032年までには44億ドルから52.4億ドルに成長すると予測されています。
この成長は、特にアジア太平洋地域における需要の増加によって牽引されています。
アジア太平洋地域では、2023年に約10.9億ドルと評価され、2033年までに約22.8億ドルに達すると予測されています。この地域の成長は、医療、電気自動車(EV)、電子機器分野での進展と、化学産業を強化する政府の取り組みによって支えられています。

日本市場におけるシリコンゴムの動向

日本では、自動車や家電分野でのシリコンゴムの採用が進んでいます。特に自動車産業では、EVやハイブリッド車の普及に伴い、高性能なシリコンゴム部品の需要が増加しています。シリコンゴムは、耐熱性や耐薬品性、柔軟性に優れており、ガスケットやシール、ホースなどの高耐久性が求められる部品に使用されています。

また、食品接触材料や医療用製品に対する関心も高まっており、これらの分野での高付加価値製品への需要が市場をさらに押し上げています。食品業界では、シリコンゴムはシールやガスケット、モールドに使用され、その無毒性と高温耐性が評価されています。医療分野では、カテーテルやバルブ、シールなどに使用され、生体適合性と滅菌耐性が求められる用途に適しています。

このように、シリコンゴムは日本の自動車および家電産業において重要な役割を果たしており、製品の品質向上と持続可能性の向上に寄与しています。さらに、食品接触材料や医療用製品における高付加価値製品としての需要も増加しており、今後の市場成長が期待されています


シリコンゴムの特性

シリコーンゴムは、その多様な特性から、さまざまな産業で広く利用されています。以下に、シリコーンゴムの主要な特性について詳しく解説します。

シリコンゴムの物理的特性

シリコンゴムの耐熱性

シリコーンゴムは200℃以上の高温にも耐えることができ、特に高温環境での使用に適しています。
この特性は、エンジン部品や高温機器のシール材としての利用を可能にし、長期間にわたって安定した性能を発揮します。

シリコンゴムの耐寒性

シリコーンゴムは-50℃でも柔軟性を保持するため、極寒の環境でも使用可能です。この特性は、冷凍機器や寒冷地でのアプリケーションにおいて重要であり、低温でも弾力性を失わず、機能を維持します。

シリコンゴムの耐薬品性

シリコーンゴムは酸やアルカリに対して高い耐性を持ちます。このため、化学薬品が使用される環境でも安心して使用できる材料です。特に医療や食品産業では、この耐薬品性が求められます。

シリコンゴムの電気的特性

シリコンゴムの優れた絶縁性

シリコーンゴムは優れた絶縁体であり、電子機器の部品として非常に適しています。電気絶縁性能が高いため、高電圧環境でも安全に使用できることから、電気機器や配線の絶縁材として広く利用されています。

シリコンゴムのその他の特性

シリコンゴムの生体適合性

シリコーンゴムは生体適合性があり、医療用材料としても使用可能です。生体内での反応が少なく、安全に体内で使用できるため、医療機器やインプラントなどに利用されています。

シリコンゴムの耐候性

シリコーンゴムは紫外線やオゾンによる劣化が少ないため、屋外での使用にも適しています。この耐候性は、長期間にわたって安定した性能を維持することを可能にし、自動車部品や建材など多様な用途で重宝されています。

まとめ

シリコーンゴムは、その耐熱性、耐寒性、耐薬品性、優れた絶縁性、生体適合性、および耐候性から、多岐にわたる産業で重要な役割を果たしています。これらの特性により、シリコーンゴムは信頼できる材料として、多くの技術革新や製品開発に寄与しています。

シリコンゴムの価格

シリコンゴム材料の価格は、製品の種類や特性、製造プロセス、そして市場の需要と供給のバランスによって大きく変動します。一般的に、シリコンゴムは他のゴム材料と比較して高価であり、その理由は以下の通りです。

まず、シリコンゴムの製造には高価なプロセスが必要です。
シリコンゴムはシロキサンというポリマーから構成されており、これを製造するためには砂(主成分は二酸化ケイ素)をシリコンに変換する過程が非常にコストがかかります。
このため、シリコンゴムの原料自体が高価であり、最終製品の価格も上昇します。

(出典)https://www.silicone.jp/info/begin2.shtml

次に、シリコンゴムの特性が価格に影響を与えます。
シリコンゴムは耐熱性、耐寒性、耐候性に優れ、電気絶縁性も高いことから、多くの産業で需要があります。特に医療機器や食品関連機器など、高い安全性と耐久性が求められる分野で使用されるため、高付加価値製品としての評価が高まっています。

さらに、シリコンゴムの価格は原材料である金属シリコンの価格変動にも影響を受けます。
2017年から2022年にかけて、金属シリコンの価格は約350%上昇しました。この急激な価格上昇は、主に中国を中心とした需要の増加と供給不足によるものです。

また、エネルギーコストの上昇もシリコンゴムの価格に影響を与えています。製造プロセスには大量のエネルギーが必要であり、エネルギー価格が高騰すると、生産コストが増加し、その結果として製品価格も上昇します。

これらの要因を総合的に考慮すると、高付加価値製品としてのシリコンゴムは、原材料費やエネルギーコスト、市場需要など多くの要素によって影響を受けており、その結果として価格は変動し続けています。

シリコンゴムの価格推移(※2017年を100%とする)
(出典)https://www.kyowakg.com/si-sheet/price-change/

シリコンゴムの配合設計

シリコンゴムの配合設計は、主成分であるシリコーンポリマーを基に、特定の用途に応じた特性を持たせるために様々な添加物を組み合わせるプロセスです。以下に、シリコンゴムの基本的な配合要素とその役割について詳しく説明します。

主成分: シリコーンポリマー

シリコーンポリマーは、耐熱性、耐候性、柔軟性に優れた特性を持つため、多くの産業で使用されています。これらのポリマーは、シリコン原子と酸素原子が交互に結合した骨格を持ち、その間に有機基が結合しています。この構造により、シリコーンゴムは高温環境でも安定し、化学薬品やオゾンに対しても優れた耐性を示します。

架橋剤: 適切な加硫反応を促進

架橋剤は、シリコーンポリマーの分子間で化学的な結合を形成し、ゴムの強度や弾性を向上させる役割を果たします。一般的には、過酸化物やシラノール化合物が使用されます。加硫反応によって形成される三次元ネットワーク構造は、ゴムの物理的特性を大きく改善し、耐久性や弾力性を向上させます。

フィラー: 力学特性やコストを調整(例:シリカ)

フィラーは、ゴムの機械的特性やコストを調整するために添加されます。シリカ(ケイ素酸化物)は一般的なフィラーであり、強度や耐摩耗性を向上させる効果があります。また、カーボンブラックも使用されることが多く、これにより耐久性や熱伝導性が改善されます。フィラーの種類や量によって、最終製品の特性が大きく変わるため、用途に応じた適切な選択が重要です。

添加剤: 耐熱性、難燃性、着色性を向上

添加剤は、特定の性能を向上させるために使用されます。例えば、耐熱剤は高温環境下での安定性を向上させ、難燃剤は火災時の安全性を高め、着色剤は製品の外観を改善します。これらの添加剤は、それぞれ異なる機能を持ち、製品の用途や要求される性能に応じて選択されます。

設計例:

  • 自動車用: 自動車部品には、高耐熱性と耐油性が求められます。このため、高温環境でも劣化しないような配合設計が必要です。例えば、高温用シリコーンゴムには耐熱添加剤や特殊フィラーが使用されます。
  • 医療用: 医療機器には、生体適合性と抗菌性が重視されます。このため、生体適合材料として認可されたシリコーンポリマーと抗菌添加剤(例えば銀系抗菌剤)を組み合わせた配合設計が行われます。

このように、シリコンゴムの配合設計は、その用途によって異なる要求特性を満たすために多様な要素から成り立っています。各要素の選択と組み合わせによって、高性能なゴム材料が実現されます。


    シリコンゴムの製造メーカー

    • 世界主要メーカー
      • Dow(アメリカ):グローバルリーダー、幅広い製品群。
      • Wacker Chemie(ドイツ):医療分野や食品用途に強み。
      • Momentive(アメリカ):産業用高機能材料が豊富。
    • 日本国内メーカー
      • 信越化学工業:医療・工業用で高いシェア。
      • 東レ・デュポンシリコーン:自動車用途の高性能製品。
      • 日本ゼオン:電気絶縁性製品が得意。

    シリコンゴムの用途

    シリコンゴムは、その優れた特性から多くの分野で幅広く利用されています。以下に、自動車、医療、家電・電子、食品の各分野における具体的な用途を解説します。

    自動車分野

    シリコンゴムは、自動車分野において特に耐熱性と耐油性が求められる部品に使用されます。
    具体的には、ターボホース、シール材、ガスケットなどが挙げられます。
    ターボホースはエンジンの過給器と接続され、高温・高圧の環境下でも性能を維持する必要があります。シール材やガスケットは、エンジンやトランスミッションの接合部で液体や気体の漏れを防ぐ役割を果たします。これらの部品は、シリコンゴムの優れた耐熱性と耐油性によって、長期間にわたり安定した性能を提供します。

    医療分野

    医療分野では、生体適合性が求められる製品にシリコンゴムが使用されます。人工臓器やカテーテル、医療用シールなどがその例です。これらの製品は、人体に直接接触するため、安全性が非常に重要です。シリコンゴムは生体適合性が高く、アレルギー反応を引き起こしにくいため、医療機器として広く採用されています。また、高温環境下での滅菌処理にも耐えるため、感染リスクを低減することにも寄与しています。

    家電・電子分野

    家電・電子分野では、シリコンゴムは電子部品の絶縁材として利用されます。
    例えば、キーパッドやケーブルカバーなどがあり、これらは電気的な絶縁性を提供しつつ、柔軟性や耐久性も兼ね備えています。シリコンゴムは高い絶縁性を持ち、湿気や化学薬品にも強いため、電子機器の保護に最適です。

    食品分野

    食品分野では、シリコンゴムは耐熱調理器具や食品接触材料として使用されます。例えば、オーブン用の耐熱マットや型などがあり、高温でも変形せず、安全に使用できる特性があります。また、食品衛生基準を満たすため、生体適合性も重要視されています。

    このように、シリコンゴムはその特性から多様な用途で活躍しており、それぞれの分野で求められる性能を満たすために最適な材料として選ばれています。


      シリコンゴムの課題と未来展望

      シリコンゴム産業は、いくつかの重要な課題と未来の展望を抱えています。

      まず、原材料価格の高騰が深刻な問題となっています。シリコンゴムの主原料である金属シリコンの価格は、2017年から2022年にかけて350%以上上昇しました。この背景には、中国における需要の急増と供給不足、エネルギーコストの上昇が影響しています。
      これにより、製造コストが増加し、企業の利益率が圧迫されています。

      次に、リサイクル技術の未発展も大きな課題です。シリコンゴムはその特性上、リサイクルが難しく、現在の技術では効率的な再利用が実現されていません。化学的分解や微粉砕技術などのアプローチが存在しますが、経済的な課題が残されています。

      また、一部用途で代替材料との競争が激化しています。エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)やフッ素ゴム(FKM)、熱可塑性エラストマー(TPE)などがシリコンゴムの代替材料として注目されており、特に自動車や電子機器分野での競争が激化しています。

      未来展望としては、環境に配慮したリサイクル可能なシリコンゴムの開発が進められています。
      高温での化学的分解技術や省エネルギー製造プロセスの導入により、持続可能な材料としての評価が高まっています。さらに、3Dプリンティング技術との融合により、製造プロセスの効率化が期待されています。液体積層造形方式を用いたシリコーンゴム3Dプリンターは、複雑な形状を迅速に製作できるため、コスト削減と生産性向上に寄与しています。

      シリコンゴム3Dプリンター

      (出典)https://www.hotty.co.jp/columns/merit-3dprinter-silicon/

      このように、シリコンゴム産業は多くの課題に直面していますが、新たな技術革新や持続可能な開発への取り組みを通じて、未来への道筋を切り開くことが求められています


        まとめ

        シリコンゴムは、その優れた特性と幅広い用途によって、現代の多くの産業において欠かせない素材となっています。耐熱性、耐寒性、生体適合性、そして耐薬品性などの特徴が評価され、自動車部品、医療機器、電子部品、食品用具など、多岐にわたる分野で活用されています。これらの用途において、シリコンゴムは他の素材では代替が難しい独自の価値を提供しています。

        市場の需要は今後も拡大が予想され、特に環境対応や次世代技術に向けた応用が期待されています。自動車分野では、電気自動車(EV)向けの高耐熱部品として、また医療分野ではカテーテルや人工臓器といった高付加価値製品への採用が進んでいます。これらの分野で成功するには、価格の最適化用途に合った配合設計、そして適切な製造メーカーの選定が重要な鍵となります。

        さらに、技術革新が進む中で、リサイクル可能な環境対応型シリコンゴムや、3Dプリンティング技術を活用した新しい製造プロセスの導入など、新たな可能性も広がっています。こうした取り組みは、持続可能な社会の実現に向けた企業の競争力を高める要素ともなり得ます。

        企業担当者として、シリコンゴムに関する知識を深め、自社の製品開発や改善にどのように活用できるかを検討することが重要です。本記事の内容を参考に、シリコンゴムの特性や市場動向を理解し、競争力のある製品づくりや効率的な材料選びを進めてみてください。シリコンゴムの可能性を最大限に活かすことで、貴社のビジネス成長に繋げていただければ幸いです!

        ワタナベ

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